なにをおもって

同情はいらない 安い

その口をふさぎたい

 


遠く離れた大事な人の体の調子がわるいと聞く
できることがない と思う
できることはないのか

神頼みなんてしてみる

馬鹿みたい 意味はない ださい

それなら軽蔑するあの人よりも私のほうが

 

できることはないのか

 

 

近く愛おしい人はどうでしょうか どうでしょうか


ひとりで立てるようにならなければ

ひとりで立てるようにならなければ

ひとりで立てるようにならなければ

 

 

 

 

美しさを

真っ当な 人の真っ当さに いつでも気づけるように まいにち人は眠るのかも 食べないよりも 眠らなければ人は死ぬってさ なにか秘密の理由があるかもよ 美しさを 隣の人の救われないセリフ 言葉の通りじゃないのよ 美しさを 無防備な瞳 本人も気づかないうちにそこに宿るのはやさしさじゃなく寂しさ 美しさを

とっておきの美しさを 

 

 

 

 

部屋の記憶

ここには誰もいない

 

時間が横たわっているだけ

そこにある机は 誰かが使っていたものだろうけれど

それがいつのことだったかなんて

知ってる人は もうどこにもいない

 

冷たい壁も

同じようにして 誰かがいつか触れたかもしれないけれど

それがいつのことだったかなんて

知ってる人は もうどこにもいない

 

記憶が宙に浮かんでいる

そのうちのひとつから声が聴こえる気がするけれど

そんなはずはないよな

 

私が腐る前に

  

  

足元はもう十分

毎日まいにち 踏みしめている

良い良い土が

待ってくれている

 

腐らないからって甘えていたら

心が固くなっていた

 

いらないよ もう 

これ以上は

求めたりしないよ もう

これ以上は

 

 

清く正しく傷つくよ

冬のはじまり なんてことないある夜の話

店を決める前からもう、その雨のようなものは降り始めていた

これはただの水だから大丈夫だよ 濡れない 

 

肌寒かったけど どうしても外で暖かいものが飲みたかった

季節はずれのオープンテラスを指差す

返事は聞く前からわかっている 私たちはノーと言わない

雨も降っていたけど 私たちは濡れなかった

道ゆく人は傘をさしていたけど 私たちは濡れなかった

椅子はずぶ濡れになって少しかわいそうな気持ちになったけど

そう 私たちは濡れなかった

私たちは話す端からすべて忘れていった

けらけら笑ってすべて忘れた

 

道路を挟んで向かい側には大きなビルがたたずんでいて、大きな時計が少しずつ数字を変えていくのを神様みたいな気持ちで見ていた

 

ただの言葉あそびだから大丈夫だよ 傷つかない

そもそも 私たちが一緒にいるあいだ、誰も私たちのことを傷つけられないよ

わかるでしょう

干したままのお布団 大丈夫だったかしら

わるぐち

ふかく傷ついたことがあるのだろうきっと

問題はない
どちらもとびきりやさしい人

言いたいなら言ってよ わるぐち
忘れるのは得意なの

言いたくないなら そのままで
あなたが守ったもの
わたしも守るよ

景色を変える

 

例えば

歩道を歩いているなら、その端のちょこんとしたブロックに乗ってみる

すりガラスの窓を少し開けてみる

秋の風がゆっくりと部屋の中に入ってくる

 

そんな風にして

それだけで見えなかったものは見えるようになると私は思う

 

目をぎゅっと瞑ってみて

まぶたを開いて

視界がひらける

 

そこに在ったんだということに気づける

 

 

目を瞑る前と

世界が何も変わっていないのは、安心? それとも?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の使っているカメラのレンズはズームできない

単焦点レンズという

 

被写体に寄りたければ、当然その分、歩み寄らなければいけないし

もっと引きたければ、その分、離れなければいけない

必要なら、壁によじ登ったり、地面に寝転んだりする

 

自分の足と腕と感覚が頼りです 単焦点レンズ

うん、私にぴったり合ってるなぁ。

 

これからの人生、何日、何ヶ月、何年かなんて知らないけれど

私は何が撮れるだろう

それが、とても楽しみなんだ