知らない夏
夜になれば涼しくなる
昼間は、まだ5月だっていうのにひどく暑い一日だった
目が覚めると、
テーブルには空のペットボトルが転がっている
カーテンが揺れる窓の外は暗い
はじめての引っ越しをして3ヶ月が経つ
家のすぐ前の通りでは、この時期小さなお祭りがあるらしい 十数個の屋台が並んでいる
知らない夏がはじまっている
開け放したままの窓
外では子どもたちの声が騒がしい
寝転んだ足の先に夜風があたる
喧騒の中で眠りに落ちるのが一番気持ちいいということを私は幼い頃に知った
絶好の機会を逃してはいけないと寝転んだところまで
ー記憶は途切れる
夜のベランダからは、いくつかのマンションがみえるー近くに高い建物がないので比較的見晴らしと日当たりが良いーそれが理由でこの部屋を選んだ
その中のまだついている明かりを数えるのが日課になった
さみしいけれど、心強い気持ちになる
ベランダのてすりに触れると、またさみしくなる
テレビを見なくなってから、テレビがすこし苦手になってしまったようで最近はもっぱらラジオを聴いている
おじいちゃんの使っていたラジオ
真夜中のラジオにはDJがいない
そういう類のことをやさしいと感じることがある